再生可能エネルギーの貯蔵方法

2019年末に発表されたスタートアップ企業Malta Inc.の、シリーズAによる2,600万ドルの資金調達は注目を集めました。その理由はいくつかありますが、まずこのスタートアップの背景には、アルファベットの謎のムーンショット・ファクトリーであるX（旧Google X）で2年間の支援を受け、そこからスピンアウトして独立法人化したという経緯があります。

今回の資金調達では、ビル・ゲイツ氏が率いる10億ドル規模のファンド、ブレイクスルー・エナジー・ベンチャーズを筆頭に、ジェフ・ベゾス氏、マイケル・ブルームバーグ氏、ジャック・マー氏、リチャード・ブランソン氏などが出資しています。

Malta社の熱交換器のテクニカル・リードであるAdrienne Little氏は、「Maltaのシステムは、例えるならば巨大な冷蔵庫のようなものだと考えています。」と述べています。

ソリューション

Maltaの新しいエネルギー貯蔵ソリューションは、将来のグリッド・スケールのエネルギー貯蔵に革命を起こす可能性を秘めています。このシステムは、電力が十分にあるときにグリッドから電力を引き出し、数時間または数日間貯蔵し、需要が高いときまで待ってからグリッドに電力を戻すことができます。これにより、再生可能エネルギーの主流となるための多くの課題を解決できる可能性があります。

エネルギー供給は、21世紀の最も差し迫った問題の一つであり、化石を利用したエネルギー生産では、エネルギー需要を満たすことはできず、また、これらの方法は持続可能ではありません。政治的・環境的イデオロギーにかかわらず、再生可能エネルギーは将来のエネルギーミックスにおいて大きな役割を果たすでしょう。

再生可能エネルギーの間欠性の問題を解決するには、エネルギーを大量に貯蔵する必要があります。炭素系燃料を完全に代替するには、風力や太陽光が利用できない期間をカバーするために、大量のエネルギーを蓄える能力が必要です。

これまでのところ、最良の答えはリチウムイオン電池です。しかし、リチウムイオン電池には、供給不足の材料が使われており、将来的には化石燃料と同様に入手が困難になると言われています。そのため、リチウムイオン電池は高価であり、地球規模での解決策としては限界があります。また、リチウムイオン電池は廃棄の際にも注意が必要であり、大規模なリサイクルの課題はまだ解決されていません。

もう一つの問題は、現在の送電網の構造にあります。通常、化石燃料を多く使用する発電は大規模な負荷の近くに設置されていますが、再生可能エネルギーの導入は、負荷から遠く離れた場所で断続的に行われています。そのため、エネルギーを大量に消費する場所への送電・配電にはコストがかかり、難しいといわれています。

Maltaのシステムは、グリッドからの電気を使って温熱と冷熱を作り出します。ヒートポンプで不凍液から熱を取り出し、温度を-65℃まで下げ、同時に溶融塩にも熱が加えられ、565℃まで加熱されます。

温熱と冷熱はこれらの温度で保存され、グリッドが再び電気を必要とするまで保存されます。この時、温度差は蒸気タービン発電所と同様の機能を持つヒートエンジンによって電気エネルギーに変換されます。

Maltaのシステムは、塩、鉄、空気といった基本的に低コストの素材を使用しているため、物理的なシステムのコストは十分に低く、最も重要な大規模エネルギー貯蔵のニーズに対して説得力のあるソリューションとなっています。

パートナー

彼らの新しいエネルギー貯蔵ソリューションに欠かせないのが、アルファ・ラバルが提供する熱伝導技術です。プロジェクトの投資家およびパートナーとして、アルファ・ラバルは専門知識や資金面での支援だけでなく実績を積み重ねた技術も提供してきました。MaltaのCEO、Ramya Swaminathan氏は次のように述べています。「私たちにとって、パートナー、投資家、そして市場での信頼性を持つ相手を選ぶのは、とても重要なことでした。外部の人たち、つまりお客様が我々の製品を見て、『ああ、熱交換器はアルファ・ラバルなんですね。安心したよ。』と言ってくれるようになります」。

Maltaの電力処理能力の成功に不可欠なのは、アルファ・ラバルが業界のリーダーであることを示す効果的な熱伝達です。アルファ・ラバルはMaltaの仕様に沿った熱交換器の予備設計から始まりましたが、彼ら独自のシステム開発に引き続き関心を持っています。

アルファ・ラバルの高い専門性とブランド力は、Maltaが顧客との会合でアルファ・ラバルに言及するたびに実感されます。　　「ソリューションの真剣さと実用性が伝わってきます」とSwaminathan氏。「何十年も熱交換器に携わってきた企業と手を組むことは、私たちの設立当初から非常に重要なことでした。なぜなら、熱交換器はコア技術だけでなく、ノウハウ、メンテナンス、製造も含めた全体的なエコシステムが重要だからです。このような複雑で大型の高性能ユニットを実際のシステムに組み込むためには、全体のエコシステムをまとめなければなりません」。