日本製鋼所M&Eが 実現した効率的で サステナブルな 工場排水処理

日本製鋼所M&E株式会社 室蘭製作所(以降 日本製鋼所M&E)では、鍛鋼品の素材を製造する鍛錬工場の大型プレス工程で発生する、1時間に50トンのプロセス水に関する課題を抱えていました。プロセス水には潤滑油などの油分やスラッジが混入しており、排水として排出するには法律で定められた基準値に適合させるための水処理が必要でした。効率的かつ環境に負荷のかからない方法で処理することを目標にアルファ・ラバルの完全密閉型ディスク型遠心分離機「CRPX918」を導入した結果、油分(ノルマルヘキサン抽出物質含有量)の基準値を大幅に下回る2ppmまで低減。併せてSS(浮遊物質量)を0.5ppm未満に処理することに成功しました。

更新日 2024-08-09 執筆者 Megumi Akimoto
日本製鋼所M&E株式会社 室蘭製作所(以降 日本製鋼所M&E)では、鍛鋼品の素材を製造する鍛錬工場の大型プレス工程で発生する、1時間に50トンのプロセス水に関する課題を抱えていました。プロセス水には潤滑油などの油分やスラッジが混入しており、排水として排出するには法律で定められた基準値に適合させるための水処理が必要でした。効率的かつ環境に負荷のかからない方法で処理することを目標にアルファ・ラバルの完全密閉型ディスク型遠心分離機「CRPX918」を導入した結果、油分(ノルマルヘキサン抽出物質含有量)の基準値を大幅に下回る2ppmまで低減。併せてSS(浮遊物質量)を0.5ppm未満に処理することに成功しました
 

 

CRPX解説図

製造プロセスに求められるサステナビリティ

サステナブルな社会の実現に向けて各業界の動きが加速している昨今、企業の環境負荷低減に向けた取り組みへの責任はますます大きくなっています。100年以上にわたって最高品質のエネルギー業界向け素材を提供し続ける日本製鋼所M&Eでは、クリーンテック(環境負荷低減技術)を採用した製品の開発・製造だけでなく、製品の製造プロセスにおける環境負荷低減についても、積極的に取り組んできました。

「鋼を鍛え上げる高い技術力を武器にする日本製鋼所M&Eでは、1世紀以上にわたり最高品質と信頼性を備えた製品を提供し続けてきました。また、室蘭は日本製鋼所発祥の地でもあります。劇的に変化しているエネルギー産業にサステナブルな製品を提供し続けるだけでなく、長きにわたりこの場所で製品を作り続けてきた一企業の責任として、いかに工場排水の環境負荷を削減するかというのは大きな課題でもありました」と日本製鋼所M&E 生産管理部 設備グループのグループマネージャー 佐藤 秀樹 氏は、当時を振り返ります。「日本製鋼所M&Eは、社会インフラや各種プラントで使用される主要機器もしくは主要部品である圧力容器や各種産業機械、大型鋳鍛鋼品、厚板やクラット鋼板の開発、製造に携わってきました。その中で、鍛鋼品素材を製造する鍛錬工場で大型プレス機のプロセス水を排出する際、混入した油分を可能な限り回収し、環境負荷を下げることが目標でした。過去には排出するための水質管理に大量の水を必要としたこともありました。排水処理は、排水の性状に合わせた薬剤を投与して処理する方法が一般的ですが、水質や油分濃度の変動に合わせ薬剤の添加量を変える必要があります。水質のモニタリングと添加量のコントロールには人的コストも必要なことから、非常に選びがたい選択肢でした。また、排水から分離した油分やSS分が膨張した固形物となり産業廃棄物として処分も必要です。環境への影響を配慮すれば、可能な限り薬剤の投与も避けたかったのです。」

 

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■ 完全密閉型ディスク型遠心分離機 「CRPX918」実機

 

分離テストを経て実証された
環境負荷低減を実現するソリューション

そこで日本製鋼所M&Eが選んだ製品は、アルファ・ラバルの完全密閉型ディスク型遠心分離機「CRPX918(以下、CRPX)」でした。本来柑橘系の皮油を抽出する目的に開発された本製品は、入口と出口にメカニカルシールを装備して、原液へのエア接触が一切ない完全密閉の仕組みとなっており、低温でも乳化した油を濃縮・除去が可能です。また、固形分間欠排出機構を有しているので、微細な鉄粒子などを除去できることも特長の1つです。

日本製鋼所M&Eでは、実機導入の前にアルファ・ラバルの分離技術試験室でのテストを実施しました。分離試験は、当社の湘南試験室に分離媒体を持ち込むケースと、お客様サイトへ当社の分離機を貸し出してテストするケースがあります。いずれの場合でも、アルファ・ラバルの分離スペシャリストがお客様のご要望と試験に適した方法をご提案しています。

今回担当したアルファ・ラバルの分離技術試験室責任者の青木 裕は次のように振り返ります。

「分離技術試験室での試験結果を基に完全密閉型の遠心分離機をご提案しました。油水分離では油分の乳化を避けるため低気温での使用について考慮する必要があったので、次のステップとして使用場所となる日本製鋼所M&Eへ完全密閉型の小型テストを持込み実際の処理を想定し試験しました。1週間にわたった油分及びSS分離試験では1時間に5トンの処理量で試験を実施し、油分(ノルマルヘキサン抽出物質含有量)75ppm、SS(浮遊物質量)40ppmの原水を油分2ppm、SS0.5ppm未満まで低減し、私たちの推察通りの結果となりました。そしてテスト機の10倍の能力を有する実機を導入し、1時間に50トンの水を処理して同様の結果を得ることができました。」

 

この水質は河川放流するための基準値を大幅に下回る良好なものです。遠心分離機は比重差による遠心力という物理力だけの分離のため、油分濃度が変動しても容易に対応できます。薬剤を使った処理のように薬剤量の調整や人的コストを要しません。

薬剤が不要で、発生する産業廃棄物も少ない環境にもやさしい技術です。これらの点も日本製鋼所M&Eが求める環境負荷低減のニーズを満たしたソリューションとなりました。

 

サステナブルな未来に向けた製品製造のために

日本製鋼所M&E 佐藤氏は、テストを経たCRPX導入について以下のようにコメントしています。

「日本同様に工場排水の基準が厳しい欧州をはじめとする海外でも実績があり、また、テスト方法を積極的に提案してくれるアルファ・ラバルの専門性は、非常に心強く感じました。実際にCRPXを導入した結果、私たちが課題としていた排水中の油分除去は75ppmから2ppmまで取り除かれ、SS除去も40ppmから0.5ppm未満まで低減させることができました。排水の処理方法も効率的で環境負荷低減を実現することができ、非常に満足しています。今後についても、定期メンテナンスなどのアフターサービスが必要となってくると思いますが、その点においても日本にサービス拠点のあるアルファ・ラバルには柔軟なサポートを期待しています。

 

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▲ 原水を遠心分離機にかけて処理した結果

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実際のテストの様子を動画でご覧いただき、当ラボの先進的な分離装置と専門家チームがどのようにお客様の課題解決に取り組んでいるかを体感してください。

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以下のテスト動画をご覧いただけます。

  • 油水分離 (植物油 / 水)実験
  • パン酵母水溶液の分離
  • 酵母の多段濃縮(3段回ケース)
  • ぶどうジュースと4種類の異なる膜による分離

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