水素を使った燃料電池が自然エネルギーに基づく 熱電併給／コージェネレーション（CHP）への移行を促進

水素インフラストラクチャー計画の中心には、水素ガスをエネルギー源とするHEE CHP燃料電池システムがあります。このシステムにおいて、燃料電池スタックの冷却に使用されるアルファ・ラバルのAlfaNovaシリーズ（オールステンレス製プレート式熱交換器）とGTLシリーズ（ガス／液用プレート式熱交換器）が非常に重要な役割を果たします。検証を積み重ね、この燃料電池システムで水蒸気と空気のみを放出することに成功しました。持続可能な水素経済の未来に向けて加速する技術です。

水素経済を実現する

2018年に設立されたHEE（Hydrogen Energy Era)は、水素に基づいた安全で手ごろな価格の持続可能なエネルギーソリューションの開発・検証・実行を通じてクリーンエネルギーの未来を確保するというミッションを遂行しています。

「再生可能エネルギーシステムへの急速な移行は急を要しています」とHEEのマネージングディレクター、ステファン・デュッシュ氏は述べています。「水素は、世界が化石燃料への依存を減らし、ネットゼロ排出に向けて進むために重要な役割を果たすでしょう。」

はじめは、HEEのCHP燃料電池システムのための部品調達は困難を要しました。しかし、アルファ・ラバルのGTLシリーズとAlfaNovaシリーズが、廃棄熱の回収とスタック冷却のために必要なことは明確でした。

「アルファ・ラバルの専門知識、確かな実績、証拠に裏付けられた熱交換器技術、商業規模の生産への対応力、再生可能エネルギーへの移行を加速するという共通のビジョン、これらに基づいてアルファ・ラバルにアプローチしました」

HEEの共同最高技術責任者、ユリウス・イェルデン・トゥルム氏は語ります。

HEEのCHP燃料電池システムは、自動車業界の類似システムから派生した設計であるため、サイズが重要なパラメータになりました。そこで、超小型で高効率・高性能・耐熱性に優れたGTLシリーズを廃熱回収ユニットとして採用したのです。

オールステンレス製プレート式熱交換器、AlfaNovaも同様で、プロセスの清浄度を確保しながらスタックを冷却します。

一般的な水素燃料電池システムの概略図

水素がスタックに流れ込み、発電します。アルファ・ラバルのAlfaNovaシリーズはスタックを冷却し、GTLシリーズは温かい空気から熱を回収して再利用します。システムからは蒸気と空気のみが放出されます

価格と性能の最高のバランス

HEEのCHP燃料電池システムにアルファ・ラバルのGTLシリーズとAlfaNovaシリーズを採用したのは、設置面積の小ささ、耐久性、高い熱効率の3点が主な理由で、価格と性能のバランスは説得力のあるものでした。「アルファ・ラバルのプレート式熱交換器は、同等のユニットよりも20％低いコストで確かな性能を発揮することが分析で明らかになりました。」とイェルデン・トゥルム氏は言います。

「アルファ・ラバルのプレート式熱交換器は、同等のユニットよりも20％低いコストで確かな性能を発揮することが分析で明らかになりました。」とイェルデン・トゥルム氏は言います。「アルファ・ラバル製品の採用を決めるのは簡単なことでした。両製品ともユニークな設計特長を持っていて、当社の定置式CHP燃料電池システムの成功の基本要素であることが証明されています。

水素を利用したCHPの要件に対応

コンパクトで耐久性に優れたアルファ・ラバルのGTLシリーズは、HEE CHP燃料電池システムの全体的な設置面積と設置コストを最小化できます。GTLシリーズは、ガス側にディンプルパターンのプレート備えた非対称チャンネルを採用し、大流量のガスと高い熱伝達効率に対応しています。これは、アプリケーションの要件を満たすために最適なソリューションであることが証明されました。また、ろう材を使用することで、プレートとプレートの接触部分をしっかりと固定し、最適な熱伝達効率と耐圧性を確保しています。更に、このGTLシリーズの設置面積は同等のシェルアンドチューブ式熱交換器よりも75％小さく、HEEが検討した他のプレート式熱交換器よりもはるかにコンパクトなものでした

燃料電池スタックの冷却は、安全で信頼性の高い効率的な運用のために最も重要です。また、プロセスのクリーン化も重要な検討事項です。100％ステンレスでできたアルファ・ラバルのAlfaNovaシリーズは、イオン溶出による腐食やシステムの劣化を最小限に抑えることができます。

「スタックの冷却にはAlfaNovaシリーズが最適でした」とトゥルム氏は言います。「冷却液として使用される高純度水は、燃料電池システムにとって必須である低伝導性を確保することができます」。

特許取得済みのアルファ・ラバルAlfaFusion接合技術は、高温と低温の媒体間の温度差が小さい場合でも、優れた機械的強度と効率的な熱伝達を実現します。その結果、エネルギーコストを節約することができます。そしてまた、耐用年数が終了した時点で完全にリサイクル可能であることも利点の1つです

プリセールスから大量生産まで

パイロット版のHEE水素燃料電池システムを検証したことで、貴陽市や地元・地域の産業パートナーとのジョイントベンチャーによるプレシリーズ生産の立ち上げへの道が開かれました。現在、HEEのCHP燃料電池システムの製造工場が建設中です。近年、HEEは、貴陽市の製造施設に納入するアルファ・ラバル社製プレート式熱交換器を追加発注し、2年以内に連続生産にスケールアップする予定です。目標は、貴陽の再生可能エネルギーソリューションの一環として、燃料電池システムを住宅用地域暖房グリッドに供給・接続することです

「現在は化石燃料から再生水素を利用していますが、インフラが整えば下水汚泥のガス化や水の電気分解等、再生可能エネルギーを動力源とする水素に移行する予定です」とトゥルム氏は述べています。「ただし、我々の燃料電池システムは、水蒸気と空気のみを放出するものであるため、地元での排出はありません」

100％を超える設備総合効率

米国環境保護庁によると、化石燃料を使用するCHPシステムの多くは、通常65～80％の総合効率を達成しています。HEEは水素燃料電池の最大電気効率は約55％と推定しています。

「HEE CHP燃料電池システムは、従来の計算方法でシステム全体の効率を105％に達することができます」とトゥルム氏は言います。「スタック冷却による熱エネルギー回収と廃熱回収による15％の追加効率を考慮すると、アルファ・ラバルのプレート式熱交換器は私たちのシステム全体の効率を高めるために不可欠です。

※上記の計算は、HEEのプレシリーズCHPユニットに基づくものであり、長期間の検証が必要となります。実際の電気・熱出力は用途によって異なります

クリーンエネルギーの未来に向けたコラボレーション

貴陽での合弁事業の成功を受け、ＨＥＥは将来について楽観的な見通しを立てています。中国全土の他の地方公共団体も、その進展を興味深く見守っています。

「中国国内の他の合弁事業にも積極的に参加し、貴陽のビジネスモデルを他の地域でも再現する予定です。」ダッチ氏は言います。「自然エネルギーによるエネルギー自給を達成し、化石燃料依存からの脱却を目指すドイツを後押しすることも楽しみにしています。」

「アルファ・ラバルの排熱回収ユニットとスタッククーラーは、定置型CHP燃料電池システムの重要な要素です。私たちの成功の根幹をなすといってもいいでしょう」とトゥルム氏は述べています

私たちはアルファ・ラバルとの信頼関係を築きました。この協力は将来も続くと信じています

HEE共同最高技術責任者　ユリウス・トゥルム氏

より良い世界のためのサステイナブルなソリューション

HEEとアルファ・ラバルは共に、世界の化石燃料への依存度を下げつつ、明日のエネルギー需要に対応するために取り組んでいます。アルファ・ラバルの排ガス熱回収用GTLシリーズとスタック冷却用AlfaNovaシリーズを備えたHEEのCHP燃料電池システムは、商業的に実現可能な再生可能エネルギーのエネルギーキャリアとして水素の利用を促進しています

アルファ・ラバルは、革新的なエネルギーソリューションを推進し、よりクリーンで持続可能な未来への移行を加速しています。これらのソリューションは、天然資源の責任ある利用を促進しながら、排出量の削減とエネルギー効率の向上を支援します。アルファ・ラバルは、世界的な需要の高まりに対応するため、これまで同様に燃料電池業界をサポートする体制を整えて行きます。

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